◆ the nightmare ? or ... ◆ 男が目を醒ます。 ゆっくりと首をもたげ、辺りを注意深く見回した。 見覚えのない景色なのだろう、男は不審そうに眉をしかめ、より鮮明な覚醒を促すかのように頭を振る。 乱れた髪を整えようと、手を動かそうとした所で…やっと気づいたのだろう。 「…何だ?」 困惑の呟きを男は漏らした。 男はすぐさま冷静になり、自分の置かれている状況を確認し始める。 自分の頭よりやや上で固定されている、右腕を後ろへと動かす。 ジャラリという金属の重く擦れる音がし、手が壁にぶつかる。 左腕を動かす。 こちらも同様。 両腕に手枷がされており、男の頭の少し上方から両頬よりも微かに前方、そして両肩近辺までと、かなり自由が制限されている。 床に座り、前に伸ばされた足を見る。 足首にも金属の枷がはめられ、そこから延びている鎖は壁に固定はされていないものの、時代錯誤的な球状のもの、おそらく鉄の塊が鎮座していた。 男の周囲は闇に包まれているようであったが、しかし、ここが地下牢の類であることは真っ暗な冷たい石の感触から類推でした。 「捕まった…のか」 男は悲観するわけでもなく、憤るわけでもなく、そこにある事実から導き出される結論を告げる研究者のように事実を口にしただけだった。 男は静かに考える。 状況は理解できた、しかし、理由が分からない、と。 逃げることもできず、このまま刻々と時が過ぎるのを待つしかないのだろうか。 何か、この状況を覆す、それが悪い方であっても良い方であっても、変化が欲しかった。 男の気持ちがどこかに潜む何者かに通じたのだろうか、思い扉が嫌な音で軋みながらゆっくりと開く。 「シャマル」 手にした燭台からは幽かな炎が揺らめいている。 浮かび上がる姿から、まだ少年であることが分かる。 しかし、顔に表情はなく、焦点の定まりきっていない瞳がそれでも尚美しく炎に照らされていた。 シャマル、と呼ばれた男、そう呼んだのだからそれが男の名前だろう、が目を細めたようだ。 「隼人」 そう名を呟いた。 「…シャマル」 もう一度男の名を呼んだ。 隼人がカツカツと軍靴のように音を響かせシャマルへと近づいていく。 時間にして数秒。 シャマルの目前まできて延ばされた足を跨いでシャマルを見下ろした。 二人の目が合う。 燭台に照らされた相手の表情を読み取ろうと探り合う互いの視線。 しかし、そこに浮かぶ互いの顔からは何の感情も伺うことはできない。 隼人はシャマルの両足の上に座り、燭台をコトリと床に置いた。 視界が悪くなり、互いの顔がよく見えなくなる。 「隼人…」 怪訝そうなシャマルの声。 「っん」 それも、隼人の唇で塞がれ息を飲む音に代わる。 シャマルは反射的に顔を逸らせようとするものの、隼人に頭を掴まれ、また、最初から体の動きが制限されていることもあり、逃れることができなかった。 隼人の唇が感じるシャマルは頑なに口付けを拒む。 ざらついた感情が隼人の心にぼこりと湧き上がる。 隼人はより強く、唇を押し当てた。 しかし、シャマルは口を結んだまま。 静かに隼人が唇を離す。 薄暗い部屋は、じりじりと蝋燭の燃える音がさえ微かに響くほどの静寂に包まれている。 隼人はシャマルの両足、太もも辺りに馬乗りになったまま、彼のシャツのボタンを外していく。 第三ボタンまで外し、すっ、と服の合わせ目から手を差し入れる。 成熟した男の肌の感触。 胸の中心から脇腹にかけて掌で撫で、もう一度来た道を帰るようにシャマルの心臓でぴたりと掌を止める。 厚い胸板の下から、規則正しい鼓動が振動となって伝わってくる。 触れている掌がじんわりと温もりを生み出す。 隼人はシャマルを正面から見据え、肌蹴ている胸にきゅっと爪を立てた。 その爪を、筋肉の中へと埋めるように徐々に力をかける。 シャマルの表情は、何も変わらない。 隼人は荒々しくシャマルの胸を引っかきながら手をのけた。 そしてガチャガチャと音を立てシャマルのズボンのベルトを外そうとする。 しかし、ベルトを外すという簡単なことが、なかなかすんなりといかずに苛立ちが募る。 やっと外れたベルトもそのままにズボンのファスナーを下ろす。 ズボンを押し開け、下着の中から何の兆候もないシャマル自身を取り出しそのまま握り込んだ。 掌を上下させ摩擦を与えながら、もう片手の指の腹で先端部分を刺激する。 しかし、シャマルには変化が訪れず。 隼人は顔を歪め、体を後ろにずらし背中を曲げた。 「隼人」 隼人の唇がシャマルの中心に触れる寸前。 鋭く、冷たいシャマルの声が隼人の背中を射抜く。 「止めろ」というシャマルの言葉に逆らい、剥き出しにされているシャマル自身へと顔を寄せ、手にしているシャマル自身へと躊躇いなく舌を這わした。 「んっ…」 鼻で息をしながら、隼人はシャマルを口へと含む。 口腔で唾液を絡ませるように舌で舐めあげていく。 「…隼人」 シャマルの声が頭の上から降ってくる。 悲しげで、憐れみすら感じる声音に、隼人はきゅっと眉をしかめ、それでも、シャマルへと奉仕を続けた。 「隼人」 腰を揺らし、シャマルが隼人の注意を引く。 「…何、泣いてんだ」 静かな声で、シャマルが尋ねる。 そう言われて初めて、隼人は自分の涙に気づいた。 シャマルから口を離すと、緩慢とした動作で目尻に指を遣る。 指先に触れる液体の感触に少し眉をしかめると、シャマルの顔を見上げた。 「泣いてなんか…ない」 幼稚な反論をする掠れた声。それが嘘を物語っている。 「泣いてるじゃないか」 シャマルが優しく笑い、隼人の涙を拭おうと手を伸ばす。 が、その指は隼人の頬に触れる前にガシャリと音を立て、止まってしまう。 「ちっ」 シャマルが軽く舌打ちをすると、 「外さないか…これ?」 顎でひょいと、手首を拘束する枷を示した。 隼人は、眉をきゅっと寄せ、黙ってかぶりを振りそのまま俯く。 「隼人?」 項垂れるように下を向いてしまった隼人に、シャマルが声をかける。 隼人への気遣いに満ちている声音。 「何でこんなことをするんだ」 穏やかな問いかけに隼人が息を飲む。 「なぁ…」 ジャラリと鎖を鳴らす。 「…分からない」 絞り出された掠れ声の悲しい響き。 「……。それじゃぁ、何がそんなに哀しいんだ?」 強情な子供をあやすようにゆっくりとした口調で尋ねた。 隼人は、顔をあげ、シャマルを正面から見つめる。 翡翠色をした瞳の中で、揺らめく炎。 「…分からない」 「分からないことだらけだな」 シャマルが苦笑する。 「分からない…けど……」 「けど?」 続きを促す。 「シャマルが…どっかに行っちゃうから……」 微かな声でそれだけ言うと、瞼を閉じ瞳に移る炎を消した。 シャマルは軽く息を吐き出すと、俯いた隼人の首筋を見つめた。 「隼人、こっちを向けよ」 隼人はかぶりを振る。 涙は消えているものの、何かの拍子で泣き出してしまいそうな表情。 そんな顔を見せることはできないから。 駄々をこねる子供のように頭を振り続ける隼人にシャマルはどこまでも穏やかに言う。 「俺に、キスしろよ」 思いもよらないシャマルの言葉に隼人が顔を上げる。 「もう一度、キスしろよ」 柔らかな命令に抗うことができず、隼人は微笑を湛えるシャマルへと体を伸ばした。 漏れた息が、静寂に反響する。 「ん……っふ、……は」 くちゃりと唾液の混じる音がして、二人の唇が離れる。 「シャマ…」 隼人が言葉を言い終わらぬうちに、シャマルが首を伸ばし、その唇を塞ぐ。 「っく……ン」 息を飲んだ隼人だが、徐々に深くなるシャマルのキスに翻弄されつつも、片腕をシャマルの頭の後ろに回しぎゅっと体を寄せていく。そして、探るように口腔を蠢くシャマルのそれへ舌を差し出す。 隼人がシャマルへと触れると、シャマルは貪欲に、それでいて気遣うように絡め取る。 「ぅ…ん……」 丹念な愛撫に隼人の体から力が抜けていく。 さらり、とシャマルの小指が隼人の髪をかすめるように撫でた。 瞬間、びくり、と隼人の背筋がざわめき、唇が離れる。 透明な名残の糸が炎に反射し、消えていく。 「隼人…」 唇にかかるシャマルの吐息がくすぐったくて、隼人が目を伏せた。 「隼人」 もう一度、何かを確かめるようにシャマルがその名を音にする。 隼人はきゅっ、と目を閉じうなだれ、とん、とシャマルに凭れるように頭を寄せる。 シャマルの息遣いや鼓動がとても近い。 「隼人」 ふわりとした感触が額に落ちてくる。 隼人は自分の額をシャマルの首と押し付ける。 シャマルは一杯まで腕を壁から伸ばしてみるものの隼人を抱きしめることはできず、腕を拘束している鎖だけががちゃりと鳴るだけだった。 その金属音に、一瞬びくりとするものの隼人はシャマルの首に回した手に力を込め己の体を更に密着させる。 熱い。 先刻の奉仕では何の兆しも顕さなかった、シャマルの中心が熱を持ち始め、その熱が隼人へと伝わってくる。 隼人がおずおずとシャマルへと触れる。 少し触っただけで、その熱は容積を増し、 「シャマル…何で」 まるで違う反応を示すシャマルに、隼人がうろたえ気味の声で尋ねる。 「何でって」 くすりと笑い、シャマルは隼人の下肢へ「隼人も苦しそうだな」と視線を投げかける。 「下脱げよ」 「えっ…?」 悪魔の囁きのように甘いシャマルの誘いに、隼人は身を硬くし、しかし、その言葉に従うようにもぞもぞと腰を浮かすと己のズボンへと手をかける。 「もっと、こっちに…」 シャマルが膝を揺らして、傍に来いと隼人へ合図した。 隼人はシャマルの肌蹴ている上半身へと凭れ掛かり、己の下肢を布の束縛から解放する。 「シャマ…ル」 目を瞑り、浮かした腰を元の位置へと戻すと、熱を増したシャマル自身が隼人のものと触れ合った。 「ひゃっ」 敏感な部分で直接感じる熱さに、思わず逃げようとする隼人を追うように自由にならない体をシャマルが動かした。 「隼人」 胸へ顔を埋める隼人の髪に、息が触れるだけのキスを落とす。 「大丈夫だから」 どこまでも優しく、シャマルが囁く。 隼人は僅かに顎を引き、こくりと頷き下を向いたままシャマル自身へと手を伸ばした。 それはとても熱くて…触れ合う隼人の中心にも熱を伝播していく。 シャマルの先端を指の腹で触る。何度かそこを刺激してみるとじくじくと体液が溢れてくる。シャマルを扱う自分の手が隼人自身にも触れ、どちらのものとも分からないぬるりとした液体が隼人の指を汚し始めた。 「シャ…マル……」 戸惑いの声でシャマルを見上げると、シャマルが苦笑していた。 「隼人、そのまま」 隼人がじっとシャマルの目を見つめ、シャマルも隼人の翡翠色の瞳を見つめ返した。 どちらかともなく唇を寄せ合わせる。 軽く互いを啄ばむと、シャマルがもっと深く侵入しようとする。 シャマルが深く入り込む寸前で、つっ、と隼人は唇を離した。 「隼…人」 隼人は膝立ちになり体を浮かすと、掌で握り込んだシャマル自身を自らの蕾へと導き、あてがった。 「ぅ…く…っ……」 体の裡へと入り込む感覚に思わず目を瞑る。 「無理するな…よ」 「む…り、じゃない」 シャマルが腰を引こうとするのを隼人は遮り、一気に体重をかける。 「あっ……く…ん」 隼人自身がシャマルの腹に触れ、どくりと蜜を吐き出していく。 その衝撃に耐えるように、隼人は息を飲み、一拍置いて大きく息を吐き出す。 半分ほど己を飲み込んでいる隼人にシャマルは微笑み、 「手、俺の肩に乗せて」 隼人の動きを先導していく。 シャマルの言葉に従い、その肩へと手をかけた隼人はうっすらと目を開けゆっくりと息を継いだ。 そして、まだ収まりきらないシャマル自身を自らの中へと少しずつ埋めていく。 「そう…ゆっくり、だ」 「ん…っく……ぅ」 隼人を支えてやることもできず、自由にならない両手がもどかしく、シャマルが鎖をかちゃかちゃと鳴らす。 「隼人…平気か」 「だ…い…じょ、うぶ……んっ」 乱れた息の元で、隼人はシャマルへと身を寄せながら答えた。 その隼人の強がりに、シャマルが応えて腰を動かす。 「あっ…っく……ぅ」 びくりと震えた隼人の背中が弓なりにしなり、シャマルを締め付ける。 「隼人、動ける…か?」 シャマルが促すと、こくりとシャマルの首へと腕を巻きつけた隼人がそろそろと腰を浮かし飲み込んでいたシャマルを出していく。 隼人が頭をシャマルの首筋へと凭れかけると、熱い吐息が触れる。 「隼人」 シャマルが名を囁くと、隼人が先ほど出したばかりのシャマルを一気に収める。 「あ…っん……ん」 その拍子にびゅっと隼人自身から白濁の蜜が漏れ…。 「続けて」 シャマルの声が隼人の耳をなでていく。 隼人が体を動かすと、それに合わせシャマルも微かに律動し始めた。 「シャ…マ……やっ」 小刻みに施される刺激に隼人が顎を上げシャマルへと視線を流す。 「隼人も動け…よ」 わざと己の腹に隼人の中心を擦りつけるようにしてシャマルが密着すると、隼人は更に蜜を滴らせる。 「だ……っ…め」 溢れだした蜜が生み出す何ともいえない卑猥な音に耳を塞ぎたい気持ちになりながらも、隼人はシャマルの上で小刻みに体を動かす。 「あっ…あ……ぅ、んっ」 天を仰ぐように口を開けて息をする隼人の首筋へとシャマルが吸い付く。 「やぁ…っあ……あ…あ……っ」 律動する度に隼人の裡にあるシャマルが膨張していき、それとシンクロするようにぐずぐずと密を振りまきながら二人の腹の間にある隼人自身も限界を迎えようとしていた。 「隼人…いけよ」 シャマルが束縛されている苦しい姿勢のままぐっと上半身を隼人に密着させ、両膝を立てると隼人の体を挟み込みように引き寄せた。 「あっ……あ…シャ……」 シャマルの名を呼ぼうとする隼人の言葉は途中で途切れ、音にならない声を発しながら隼人は大きくびくりと体を震わせ己を解放する。 二人の間で隼人が弾けながら、背中を何度もびくびくとさせ、肩で息をしつつシャマルへ抱きつく。 「隼人」 まだ波が収まらないのだろうか。 シャマルの首筋に当る隼人の息遣いも荒いまま。 「っ…く」 不意に隼人が顔を上げ、シャマルを泣きそうな、半分泣いている顔で見つめた。 「悪い…」 隼人の裡で雄を膨張させたシャマルが、緑色の瞳に苦微笑した。 その微笑みにつられるように、隼人も頬を少しだけ緩める。 そして、きゅっ、と目を瞑るとシャマルの上で体を上下させ始めた。 「シャ…マ、ル……い…い?」 まだ落ち着かない呼吸のまま、隼人が聞く。 「あ…あ」 答えるシャマルの声も苦しげになってくる。 体液のまぜこぜになった音に、二人の呼吸音が響く。 「隼人…手」 シャマルが束縛されている己の手をひらひらとさせる。 隼人はシャマルの首に回していた掌を外し、シャマルのそれと重ね合わせる。 金属の冷たさが、妙に心地よく。 「シャマ……ル」 ぐい、と組み合わせた手をシャマルが握りこむ。 「っう」 短い唸りと共に、シャマルが隼人の裡で果て、シャマルが精を吐き出す震えに連動し隼人も身を震わせる。 最後の放出の後、一瞬の緊張が二人の動きを静止画のようにみせる。 そして、そのまま隼人は体を弛緩させシャマルへと崩れ落ちた。 「大丈夫か…?」 耳を撫でるシャマルの言葉がくすぐったく、隼人はシャマルの胸へと額を擦りつけた。 シャマルが雰囲気だけで微笑んだのが分かり、きゅっと組んだままの指に力を入れ、 「もう、悲しくないか?」 その声の優しさに溺れるように隼人は目を閉じ…。 最悪だ…。 本来、朝があまり強くない獄寺であったが、ここ最近は10代目を迎えに行くという大切な仕事のおかげで毎日張り合いがあり朝から清々しく元気に過ごすことができていた。 最悪だ。 起きてから何度目になるのか分からない、呟きを心の中で繰り返す。 寝坊して10代目を迎えに行けなかったのだ。より正確に言うと、寝坊した獄寺はそれでも急いで迎えには行ったものの折り悪く日直に当っていた綱吉は「獄寺君にごめんねって伝えておいて」という伝言を母に残して既に学校へと向っていたのだ。 あのお優しいお母さまにまで心配かけるだなんて。 ごめんね、獄寺君、という謝罪に続いた、顔色が悪いけど大丈夫?という言葉を思い出し、獄寺は益々落ち込んだ。 それというのも…。 「シャマルのあほ」 ぼそりと呟きながらとぼとぼと学校まで歩いていく。 どうせ今から急いでも遅刻なのは分かりきっているのだから、と肩を落として獄寺はため息をつきながらそれでも律儀に学校へと向かっていた。 「お、隼人。ボンゴレ坊主はどうしたよ?」 だから、ぽん、と肩を叩かれた獄寺の目つきが酷く剣呑であっても仕方のないことなのだ。 「んだよ。睨むなよ」 振り返った先にいる、これまた朝は弱いんですと全身で主張しているようなだらりとしたシャマルの姿を見て、獄寺は睨みながらため息をつくという離れ業をやってのけた。 「何、朝っぱらからため息なんかついてんだよ」 景気悪いなぁ、と悪態をつきつつも、隼人の真横にぴったりと同じ速度でシャマルも歩を進めている。 「寄んじゃねぇよ」 ぷい、と隼人が足を早めれば、シャマルも速度を上げる。 「んだよ。ずいぶん不機嫌じゃないか」 へらへら笑うシャマルを見ると、怒りがこみ上げてきて。 「誰のせいだと思ってンだよ」 足を止めシャマルに向かい合う姿勢で、獄寺は言い放った。 この時に、少しだけ見上げる格好になってしまうのがまた口惜しい。 「は?」 突然、怒りを向けられたシャマルが大げさに驚いてみせる。 二人の視線がまともに合う。 獄寺は不意に顔を真っ赤にし、走り出した。 「…何だ、一体?」 後には状況がよく分からないシャマルが一人で取り残されていた。 そうだ。 全部、シャマルが悪い。 学校に向って走りながら、獄寺は思う。 シャマルのせいで…。 あんなヘンな夢。 獄寺は、走りながらふるふると頭を振る。 悪夢だ。 忘れよう…。 と思うそばから、シャマルの顔が浮かんできて。 最悪だ。 更に走る速度を上げた。 |