◆ 不確定未来 ◆ 「あれ、そういえば雲雀さんは?」 敬愛する10代目の声が獄寺の耳に響いた。 「どこに行ったんだ?」 ツナの問いかけに、山本が答えた。 「本当に、どこに行ったんだろう……。大丈夫、かな」 心配そうに呟くツナへと、獄寺の視線が向かった。 一匹狼の風紀委員長の心配までするとは、何という優しい心の持ち主なのだ、と心酔している瞳が感動していた。 「ご心配なく、10代目!」 「ご、獄寺君?」 「俺が責任持って、雲雀のやつを探してきますから」 言うが早いか獄寺は屋上の出口から飛び出していった。 屋上から出た獄寺は、多分、雲雀はもう片方の棟の屋上にいるのだろう、と目星をつけていた。 かの風紀委員長の行動はひどく単純なのだ。 それ故、獄寺はまっすぐに階段を駆け降りた。 すぐ下の階で渡り廊下を走る。 屋上への階段を上ろうと足をかけ、ふと動きを止めた。 慌てて、後ろを振り返る。 何かに呼ばれたような気がしたのだが。辺りを見回し、誰もいないことを確認する。 やはり、気のせいだったのだろう。 階段を駆け上がる。 だが、その動きも数段目で止まり、少し逡巡した結果、獄寺は踵を返し、階段を下りていた。 そのまま、1階まで下りていく。 見慣れてるはずの校舎は、具体的にどこといえないが年月を経、老朽化しているようだった。 廊下を一人歩く。 目的の部屋まで着き、獄寺の足が止まった。 この扉を開けようか。 このまま、立ち去ってしまおうか。 獄寺は扉の前で手をあげたり下げたりして、明らかな戸惑いを見せていた。 ぎゅっと掌を握りしめ、大きく深呼吸をした。 扉に手をかけると、一気にそれを開いた。 ガラガラという摩擦音を響かせ、扉が開いた。 獄寺の視界に飛び込んできたのは……。 「よう、隼人」 ゆっくりと振り返った白衣の人物は、 「――遅かったじゃねぇか」 そう皮肉げに、しかし獄寺を安心させるかのように笑った。 獄寺は10年後に来て初めて、心細さを感じていた自分を知った。 何故か、一筋の涙が頬を伝った。 |