不確定未来




「あれ、そういえば雲雀さんは?」

敬愛する10代目の声が獄寺の耳に響いた。

「どこに行ったんだ?」

ツナの問いかけに、山本が答えた。

「本当に、どこに行ったんだろう……。大丈夫、かな」

心配そうに呟くツナへと、獄寺の視線が向かった。
一匹狼の風紀委員長の心配までするとは、何という優しい心の持ち主なのだ、と心酔している瞳が感動していた。

「ご心配なく、10代目!」
「ご、獄寺君?」
「俺が責任持って、雲雀のやつを探してきますから」

言うが早いか獄寺は屋上の出口から飛び出していった。




屋上から出た獄寺は、多分、雲雀はもう片方の棟の屋上にいるのだろう、と目星をつけていた。
かの風紀委員長の行動はひどく単純なのだ。
それ故、獄寺はまっすぐに階段を駆け降りた。

すぐ下の階で渡り廊下を走る。
屋上への階段を上ろうと足をかけ、ふと動きを止めた。
慌てて、後ろを振り返る。
何かに呼ばれたような気がしたのだが。辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
やはり、気のせいだったのだろう。
階段を駆け上がる。
だが、その動きも数段目で止まり、少し逡巡した結果、獄寺は踵を返し、階段を下りていた。
そのまま、1階まで下りていく。
見慣れてるはずの校舎は、具体的にどこといえないが年月を経、老朽化しているようだった。
廊下を一人歩く。
目的の部屋まで着き、獄寺の足が止まった。

この扉を開けようか。
このまま、立ち去ってしまおうか。

獄寺は扉の前で手をあげたり下げたりして、明らかな戸惑いを見せていた。
ぎゅっと掌を握りしめ、大きく深呼吸をした。
扉に手をかけると、一気にそれを開いた。

ガラガラという摩擦音を響かせ、扉が開いた。

獄寺の視界に飛び込んできたのは……。



「よう、隼人」


ゆっくりと振り返った白衣の人物は、


「――遅かったじゃねぇか」



そう皮肉げに、しかし獄寺を安心させるかのように笑った。


獄寺は10年後に来て初めて、心細さを感じていた自分を知った。
何故か、一筋の涙が頬を伝った。





03/03/2009




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