◆正解に辿りつくまでの呼吸の回数◆ 長い指が宙で翻り、ポイ、と何かを放り投げた。 弧を描いて飛んできたそれを椿は受け止め、一拍置いてから、ジーノの顔を見つめた。 「バッキー、早くしてよ」 「えっ? あの?」 掌の中にある鍵とジーノの顔とを交互に見る椿に、呆れたとでもいうように、実際椿の察しの悪さに呆れ気味ではあるのだが、ジーノは盛大にため息をついた。 「バッキー。君が持っているのは何だい?」 「えっ、あっ、鍵、です」 「そう。僕の車の鍵だよ」 「はぁ……?」 ジーノの謎かけに、椿は眉根を寄せてじっと銀色に光る鍵を見つめた。 真剣な表情で、ぎゅっと眉を寄せる。 その姿をジーノは面白そうに見つめ……。 すっと長い指で椿の掌から鍵を取り上げた。 「えっ?」 「時間切れだよ」 チャラチャラと椿の目前で鍵を振り、一瞬だけ微笑んた。 「残念だったね、バッキー。せっかく僕のマセラティを運転できるチャンスだったのに」 それだけ言うと、ジーノは肩をすくめて椿に背を向けた。 「えっ? えっ? ……あっ!」 残された椿はジーノの言葉の意味を考え、やっとジーノの投げかけた問いの答えに至る。 「お、王子」 「ん?」 足を止め、ジーノが顔だけを振り向かせた。 「つ、次はちゃんと送りますから」 真剣な顔で言う椿に、ジーノは端正な唇を上げ、仕方がないというように笑った。 「送るだけでいいだなんて、君は本当に忠実な犬だねぇ」 期待してるよ、と片手を挙げ、ジーノはクラブハウスを後にした。 残された椿が、ジーノの更なる謎かけの答えを知るのは、もう少し先のことである。 |