正解に辿りつくまでの呼吸の回数




長い指が宙で翻り、ポイ、と何かを放り投げた。
弧を描いて飛んできたそれを椿は受け止め、一拍置いてから、ジーノの顔を見つめた。

「バッキー、早くしてよ」
「えっ? あの?」

掌の中にある鍵とジーノの顔とを交互に見る椿に、呆れたとでもいうように、実際椿の察しの悪さに呆れ気味ではあるのだが、ジーノは盛大にため息をついた。

「バッキー。君が持っているのは何だい?」
「えっ、あっ、鍵、です」
「そう。僕の車の鍵だよ」
「はぁ……?」

ジーノの謎かけに、椿は眉根を寄せてじっと銀色に光る鍵を見つめた。
真剣な表情で、ぎゅっと眉を寄せる。
その姿をジーノは面白そうに見つめ……。

すっと長い指で椿の掌から鍵を取り上げた。

「えっ?」
「時間切れだよ」

チャラチャラと椿の目前で鍵を振り、一瞬だけ微笑んた。

「残念だったね、バッキー。せっかく僕のマセラティを運転できるチャンスだったのに」

それだけ言うと、ジーノは肩をすくめて椿に背を向けた。

「えっ? えっ? ……あっ!」

残された椿はジーノの言葉の意味を考え、やっとジーノの投げかけた問いの答えに至る。

「お、王子」
「ん?」

足を止め、ジーノが顔だけを振り向かせた。

「つ、次はちゃんと送りますから」

真剣な顔で言う椿に、ジーノは端正な唇を上げ、仕方がないというように笑った。

「送るだけでいいだなんて、君は本当に忠実な犬だねぇ」

期待してるよ、と片手を挙げ、ジーノはクラブハウスを後にした。



残された椿が、ジーノの更なる謎かけの答えを知るのは、もう少し先のことである。





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初!バキジノ。
まだ清く正しい飼い主とわんこの頃のお話。
バッキーはわんこの様で可愛いよねというお話、というか、王子はやはり王子だよねというお話。
というか……。
081224
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