◆指先◆ 「ああ、爪が伸びてきちゃったね」 美しく整っている指先を眺め、ジーノは傍らにいる椿へと視線を流した。 「えっ」 まともに目が合い、椿は瞬間どきりとする。 飼い主の声に反応した犬のように固まっている椿を見てジーノが微笑む。 「いいこと思いついた」 ジーノの良いことは椿にとってあまり良いことではなく、案の定麗人は「バッキー、爪切ってくれる」と手を差し出したのだった。 「あっ」 緊張した面持ちで固まっている椿に、ジーノはにこりと微笑み、専用の爪切りを渡した。 通常とは違うその形に椿の顔は更なる緊張が走る。 微笑んでいるジーノとまともに目があった。 「俺、が、がんばります」 「うん」 少し目を細め、ジーノは身をソファに沈め、指を椿に預けたのだった。 101115
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