指先




「ああ、爪が伸びてきちゃったね」
美しく整っている指先を眺め、ジーノは傍らにいる椿へと視線を流した。
「えっ」
まともに目が合い、椿は瞬間どきりとする。
飼い主の声に反応した犬のように固まっている椿を見てジーノが微笑む。
「いいこと思いついた」
ジーノの良いことは椿にとってあまり良いことではなく、案の定麗人は「バッキー、爪切ってくれる」と手を差し出したのだった。
「あっ」
緊張した面持ちで固まっている椿に、ジーノはにこりと微笑み、専用の爪切りを渡した。
通常とは違うその形に椿の顔は更なる緊張が走る。
微笑んでいるジーノとまともに目があった。
「俺、が、がんばります」
「うん」
少し目を細め、ジーノは身をソファに沈め、指を椿に預けたのだった。


101115








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